アルパカ小児科耳鼻科クリニック 小児科医 藤原 摩耶
『発疹』を主訴に受診されたお子さんの親御さんから「乳児湿疹ですか?アトピーですか?」とよく質問されます。そんな時、「アトピーだったら一生治らないのでは?」というご家族の不安を肌で感じます。
アトピー性皮膚炎とは『掻痒感(そうようかん)のある発疹がよくなったり悪くなったりすることを一定期間(乳児だと2ヶ月、幼児以降は6ヶ月)に繰り返すこと』とされています。
けれど、赤ちゃんにとって掻痒感のある発疹がでている状態はとても不快ですし、食物アレルギーの原因にもなるので、診断とは関係なく、なるべく早い時期に対処することが望ましいと考えます。
乳児期のアトピー性皮膚炎は適切な治療が行われた場合、3年以内に50~70%が改善するというデータが出ています。
「治療をしなくても軽ければ自然治癒力でよくなるのでは」と思う親御さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし一方で、発疹はひどくなればなるほど、治るまでに時間がかかる、というデータも出ています。掻痒感のある発疹が気になる場合は、早めに小児科へご相談ください。
小児科を受診すると発疹の状態により、保湿剤を出されるケース、ステロイドと保湿剤を合わせたものを処方されるケース、ステロイドを処方されるケースがあります。
いずれの薬が処方された場合でも、指の第一関節1本分の外用薬の量で、手のひら2枚分のスペースが塗れると考えてください。
このくらい厚く塗ると、塗った場所にティッシュがはりつくくらいベタベタします。
「結構厚く塗るんだな…」と驚かれていませんか?
炎症を起こしている皮膚は、健康な皮膚と比較してざらざらしています。つまり凸凹している状態です。
薄く伸ばして塗ってしまうと、炎症を起こしている皮膚の凸の部分に薬が十分にのらないため、ぶりかえしやすくなります。
凸の部分にも薬がたっぷりかぶさるように厚く薬を塗る必要があるのです。
また、特に炎症がひどい部分に関しては、軟膏を塗った後にガーゼやリント布(※リント布:片面が起毛した、ガーゼより少し厚手の布。薬局などで扱っています。)でカバーをするのも良い方法です。
大人は、掻き壊すと後で辛くなると知っていますから、掻き壊さないよう自制します。
しかし、子どもたちは肌がかゆいと力のかぎり掻きむしります。爪をマメに切っていたとしても、大人より細い指で強い力で掻き壊すと、肌のダメージは大きなものとなります。
そこで、軟膏を塗った後、ガーゼやリント布で保護すると掻き壊しによる肌のダメージを軽減します。1日2回たっぷりと薬を塗る生活を続けていると、皮膚の状態はめざましく改善します。発疹がよくなったら、塗る頻度を1日1回に減らします。良い状態が保てている場合は、1日おき、週2回…と、ゆっくり減らしていきます。
慣れないうちは1~2週間に1回受診して、皮膚の状態を医師に確認してもらうと安心ですね。
また日々の『保湿』を続けることが、次の悪化を予防できます。仮に再び発疹が現れても、数日間、薬を塗ることで速やかに改善します。また保湿により、皮膚のバリア機能が保たれていれば、とびひ(伝染性膿痂疹)や水いぼ(伝染性軟属腫)の予防にもつながります。
保湿剤は軟膏、クリーム、ローション、泡状スプレー、スプレータイプなど、様々な形態のものがあります。軟膏の方が保湿効果は強いものの、夏場は泡状スプレーやローションの方が続けやすいかもしれません。
以上、子どものスキンケアのポイントは、この2つになります。
『発疹は早めに治療を始めましょう』
『保湿を継続しましょう』
2021年10月25日配信