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食中毒について

TMGあさか医療センター小児科 小林真澄先生

食中毒とは何か、そして日常生活でどのような注意をすればいいのかを考えてみたいと思います。

*食中毒とは?・・・

食中毒とは、細菌やウィルス、また有毒物質などが含まれる食べ物や飲み物を介し、発熱や腹痛、嘔吐、下痢など中毒症状をおこしたものを言います。
中毒症状は必ずしも嘔吐や下痢などの胃腸症状とは限りません。
例えばボツリヌス菌やフグ、キノコのように神経症状を起こすものもあります。
一方、ノロウィルスのように、患者の吐物や便などからヒトからヒトへ接触感染で広がる場合は、幼稚園や学校などの施設で集団発生しても、食中毒とはいいません。

*主な原因

原因としてはウィルスが半分以上を占めます。
有名なものはノロウィルスです。
次が細菌性で30%くらいを占めます。
サルモネラ、カンピロバクター、ブドウ球菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオなどがあります。
また動物性のものとしてはフグや貝の毒、キノコや有毒植物のような植物性のものもあります。
その他としてはアニサキスのような寄生虫もあります。
以下に主なものの特徴を簡単に述べてみます。

1) ノロウィルス

食中毒の主要な原因で、特に冬季(11~1月)に流行します。原因食品として、生カキ、刺身、寿司、パン、サンドイッチ、サラダなどがあります。カキのように食品そのものがウィルスを持っている場合もありますが、感染した患者さんが取り扱った食品から感染したものが多いようです。

2) 黄色ブドウ球菌

どこにでも存在する菌ですが、その中の毒素が原因で起こります。発症までに1~6時間と短いのが特徴です。加熱が不十分だったり、室温放置などをしていた食べ物で起こることが多いようです。

3) サルモネラ腸炎

卵や鶏肉が原因の多くを占め、加熱が不十分だったり、生食によるものがあります。またカメ
などのハチュウ類からの感染もあります。菌が血液の中に入ってしまう菌血症を起こすと、重篤な合併症を起こすことがあります。小児や高齢者は重症になりやすいので注意が必要です。

4) カンピロバクター

毎年5~7月にピークがあります。原因は肉類、特に鶏肉が多く、そのほか牛レバーなど動物の内臓の生食による報告もあります。

5) 病原性大腸菌

O-157,O-111に代表される腸管出血性大腸菌を始め、腸管毒素原生大腸菌など5つのグループに分かれていますが、腸管出血性大腸菌が一番問題になります。特に小児、高齢者は重症になりやすく、溶血性尿毒素症候群という状態を起こして、毎年数人の方が亡くなっています。
健康なウシの1~2%の腸管内に存在していて、肉や内臓の生食、または汚染された水などで感染します。

6) アニサキス

寄生虫の一種です。最近問題になっていますね。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどに多く寄生します。胃や腸の壁に刺入して食中毒を起こします。白い糸のようなもので目視で確認することもできます。冷凍するか加熱すれば大丈夫です。
  

*気をつけること

食中毒は家庭で予防できます。
ポイントは「つけない、増やさない、やっつける」です!
  例えば細菌なら・・・
  ▶細菌を食べ物に「つけない」
  ▶食べ物に付着した細菌を「増やさない」
  ▶食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」
 
食材は新鮮なもの、きちんと管理されたものを選びましょう。
特に刺身など生で食べるものは注意してください。生卵も小さい子はできるだけ避けてください。
貝類も加熱調理用のものは良く加熱してください。
肉類は良く焼いて食べましょう。

また家で調理するときは、まな板や包丁などを、肉類に使うものと生で食べる野菜などに
使うものと分ける、または肉類に使ったあとはよく洗うなどの注意が必要です。
もちろん手洗いをしっかりすることは言うまでもありません。

コロナ禍以来、テイクアウトやデリバリーも増えていますが、調理してから食べるまでの
時間が長くなりがちですので食中毒のリスクも高くなります。これも注意してください。

大人のちょっとした注意が、子どもたちを病気から守る一番の手だてになるのです。

2023年8月配信

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