信濃医療福祉センター名誉所長 朝貝芳美
赤ちゃんの頭の変形の原因には様々ありますが、仰向けに寝かせている時間が長いと赤ちゃんの頭の骨はまだ柔らかいため後頭部が扁平になる変形を生じます。第2子は第1子に手がかかり、おとなしい子は仰向けに寝ている時間が長くなる傾向があり、特に強い向き癖があると向いている側の後頭部が扁平になりやすいため、早期からの予防が重要となります。
生後3か月頃、親に向き癖について尋ねると約60%に向き癖が「みられる」あるいは、「みられた」と回答し、向き癖のうち65%は右向きであり右の向き癖が多くみられます。仰向けで向き癖があると、体は向いている方に捻じれ、向いている反対側の膝が立て膝状態となっていることが多くみられます。
原因は明らかではありませんが、子宮内で右を向いている胎児が多いことや、右利きの母親の約70%は赤ちゃんの右側に寝ており、横抱きでは赤ちゃんの頭部を母親の左腕で支えることが多い等、生まれてからの要因も考えられます。
向き癖は生後3か月頃には改善することが多いので、生まれてすぐから仰向けで寝かせきりにしないで、いろいろな姿勢をとらせて関わることが重要です。向き癖があると体も向いている方に捻じれ、膝が立て膝状態となっているので、頭だけ反対側を向かせようとしてもうまくいかないことが多いため、以下の対応も参考にしてください。
・ベッドの位置は赤ちゃんの向きやすいほうを壁側にして寝かせ、親の寝る位置(隣に寝そべっている位置)を子が向きにくい側にする。
・抱き方の原則は、首がすわっていなくても頭部を支えての縦抱きコアラ抱っこ「コアラが赤ちゃんの下肢を広げて対面で抱っこする時のだき方」が推奨されます。首がすわっていない場合は、サポートをしながら縦抱き、ということです。ポイントは、お尻よりもひざの高さが上になるように股関節を曲げることが大切です。抱っこについての写真も文末にありますので参考にしてください。
右利きの母親は左腕で赤ちゃんの頭部を支える横抱きが多くなるので、赤ちゃんは右(親のほう)を向くことが多くなります。
・うつ伏せ寝は突然死などとの関連が指摘され推奨されていませんが、生後2~3か月になれば窒息に注意して、運動発達の関連から(うつ伏せで頭を持ち上げることで首すわりが安定する)も見守りながら長時間にならない程度にうつ伏せも行うことは必要と思います。
乳児股関節脱臼は向き癖反対側の股関節の開きが悪くなり、保護者がおむつ替えの時に股関節が開きにくく、おむつが替えずらいと感じている例もあります。右の向き癖が多いため、脱臼は左側に多いことが知られています。向き癖を早期に予防することは股関節脱臼の予防にもつながり重要です。
乳児股関節脱臼について詳しくは「知っていれば防げる!先天性股関節脱臼」 |子どもと医療 (kodomotoiryo.com)
片側の首の筋肉(胸鎖乳突筋)にしこりがみられ、膨らんでいるため家族が入浴時に発見することもあります。生後3~4週頃から徐々にしこりが小さくなり、1歳過ぎまでに90%以上は自然に消失します。しこりがあると、しこりのある方へ首は傾き、顔はしこりと反対側を向きやすくなり、後頭部の扁平化や顔面の非対称を生じる場合もあります。初期治療はこのような変形を生じさせないために、向き癖に対する対応が重要になります。
2022年1月4日発行
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