ひだまりクリニック院長 小児科医 佐山圭子
母親学級を定期的に開いてきて思うのは、子どもの睡眠も個性があるな、ということです。よく寝る子、あまり寝ない子というだけでなく、寝ぐずりの激しい子やそれほど苦労しない子、敏感によく起きてしまう子もいれば、ぐっすり寝る子もいて。お昼寝が短いことも多いです。
日本の子どもは世界から見ても睡眠時間が短いことで有名ですし、生活リズムが整っているよい睡眠の習慣を、赤ちゃんのときから自然につけられるといいなと思います。赤ちゃん(乳児)と言われるのは生まれてから1歳まで。赤ちゃんにとっては大きな成長がある時期です。ですので、成長の時期ごとに睡眠の様子は随分違います。
今回は生まれてから1~2か月頃までの睡眠についてお話しましょう。
生まれてすぐの時は、おっぱいやミルク、おむつ、抱っこ、ねんね、おっぱい、抱っこ、おむつ、ねんね、ミルク……と、エンドレスにも思えて、そして昼と夜がはっきりしない感じで、家族中寝不足になったり、抱っこで疲労がたまったり……と、本当に大変な時期です。でも、おっぱいを頑張りたい人にとっては、とても大事な時期でもありますから、赤ちゃんのことだけすれば良いという環境だといいですね。赤ちゃんのこと以外はしなくていいくらいに、できるだけ家族に手伝ってもらいましょう。産後ケアのシステムも整い始めていて、お産の後に「ショートステイ」という、宿泊型でお母さんのサポートをする事業も多くの自治体で始まっています。利用を考えてもいいでしょう。
こういう時期は、楽な抱っこを覚えておくといいですね。
お母さんとぴったり密着して、包まれるような抱っこで優しく揺すってもらうと安心します。なるべく赤ちゃんの体重を自分の身体に預けるようにして抱っこしてみましょう。自分の胸にうつ伏せにして自分がソファ(頭の方を高くしたお布団)などに寄りかかるのもいいです。顔は左右どちらかに向かせます(向き癖と反対向きがいいでしょう)。頭の歪み予防にもなりますね。このとき、股関節のM字型の開排位(股関節を曲げて開く体位)になるように気をつけてください。
まだまだ赤ちゃんは、この世に慣れていないのですから、子宮の中で包まれているような感覚、密着している感覚が好きなのですね。この時期の赤ちゃんを見ているとそう感じます。優しくしっかり包まれている感じ、ゆっくり揺らされている感じが好きで、反対に、音にも光にも重力にも直接強く触れられることにも慣れていないのです。
3時間以内の授乳は、本当に疲れることと思いますが、赤ちゃんに深く乳首をとらえてもらい、しっかり飲みとってもらうことによって、母乳は分泌するので、母乳育児をしたいと考えている人は、この時期は頑張りどころです。しっかり飲めているか、体重が上向きになってきているかは、赤ちゃんの計測・診察でわかるので、できれば生後2週間のタイミングで健診を受けられるといいと思います。混合の場合のミルクの足し方の相談もできますね。
1か月健診の頃には、昼と夜の区別がまだはっきりとわかっていない子もいますが、だんだんわかってきている子もいます。昼は授乳後でも寝ないけれど、夜は授乳後に3時間くらい続けて寝てくれる、というような場合は昼と夜が少しずつわかってきているのだと思われます。
妊娠中から夜更かししないように気をつけて、日ごろから早寝早起きを心がけると赤ちゃんも自然と早寝早起きになりやすいです。母乳からメラトニンという睡眠に関係するホルモンも移行するということも言われています。
赤ちゃんもゆっくりゆっくりこの世に慣れていく時期です。ゆっくりゆっくり、お母さんになっていきましょう。
次回は、赤ちゃんは2か月前後になると夜に長く寝るようになる、というお話をしましょう。