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お薬が苦手な子が飲めるようになる工夫

ファーマシーすず すず薬局緑町店(東京都昭島市)
山下慎太郎(薬剤師)

小児中心の調剤薬局では、「子どもが薬を飲むのを嫌がって」とか「薬ってどうやって飲ませればいいのですか」という相談をよく受けます。今回は、そのようなときにお話ししていることを、お伝えしたいと思います。

【今回の内容】
1. 先入観を捨てましょう
2. 粉薬とシロップ剤
3. 年齢別の工夫
4. 上手なお医者さん、薬局のかかり方

子どもが薬が苦手な理由は何でしょうか?
・粉っぽいから?
・苦いから?
・量が多いから?
そして「飲む人」と「飲ませる人」が違うというところにも鍵があります。

1. 先入観を捨てましょう

◆先入観1つ目

「子どもに粉薬は苦いし飲みづらい」など、保護者が子どもの服用に対して、消極的なことがあります。でも、最近の薬は製薬会社の努力により、かなり味が良くなってきています。

また「ドライシロップ」と名前がついている粉薬は、いわば「シロップを粉にしたもの」で、水で溶かすと甘いシロップになります。子どもに粉薬がでた時にちょっと味見してみてください。びっくりするほど飲みやすいと思います。

◆先入観2つ目

保護者が「この子は薬は飲めない」などと思っていると、子どもはそんな不安を感じて、飲んでくれないことがあります。「この子は飲める、大丈夫」と、おおらかに構えていると、意外とスムーズに行くこともあります。

何が何でも飲ませなければ、と頑張りすぎる必要はありませんし、上手くいかないからと、ご自身を責める必要もありません。子どもが薬を飲んでくれないときは、ちょっと時間を空けてみたり、「次は頑張ろうね」と声を掛けてみてはいかがでしょう。

◆先入観3つ目

必ずしも「薬は食後」ではありません。子どもの薬で必ず食後に飲まなければならないものはそれほどありません。食後はお腹がいっぱいで飲むのを嫌がったり、吐いたりしてしまうこともあります。お医者さんや薬剤師さんに、空腹時に飲ませてもいい薬かどうか、ぜひ聞いてみてください。

2. 粉薬とシロップ剤

子どもに出る薬は、粉薬とシロップ剤が主になります。どちらがいいかは保護者が、お医者さんに希望を伝えましょう。

以下は粉薬、シロップ剤を比べた際のメリットとデメリットです。参考にしてください。

◆粉薬
メリット
衛生的に管理できる。飲ませるための加工がしやすい。はかりとる必要が無い。

デメリット
薬によっては苦味や臭いが強い。
保存方法によっては湿気る。

◆シロップ剤
メリット
甘く味付けされているものが多い。

デメリット
何度も開栓するので汚染されやすい。1回量のはかり取りがある。(カップやスポイトが必要)誤飲の危険性がある。

3. 年齢別の工夫

まず基本として、薬は水で飲みましょう。
水以外の物に混ぜたとしても、最後には水を飲ませるようにしてください。

服薬する方法として
① 水で溶いてシロップにする方法
② 薬団子作る方法
③ 水以外の好きな食品に混ぜて飲む方法
④ 服薬ゼリーを使う方法
⑤ 良く説明して納得して飲む方法

これらの方法を年齢に沿って説明します。

◆生後~1歳前後
【特徴】この時期は味覚も発達中で、空腹時は何でも口に入れてくれます。比較的飲ませやすい時期です。

【姿勢】赤ちゃんは横抱きにしてください。

【シロップ剤】
スポイトでほんの少量ずつ、赤ちゃんの呼吸に合わせてゆっくり入れてください。また哺乳瓶の乳首の部分に入れて吸わせるという方法も有効です。

【粉薬】
①水で溶いてシロップ剤と同じように飲ませます。
②ほんの少量のお水で溶いて団子状にしたのを、保護者の指に付けて吸わせ(舐めさせ)ます。またそうしたものを、上あごやほほの内側に塗るということもできます。

いずれの方法でも、最後には水を飲ませてください。

◆1歳前後~3歳
【特徴】味覚が発達してきて、嫌なものはいや!と自己主張もはじまります。飲んでもらうのに苦労する時期です。

【道具】コップ、スプーン、ストローなど、どれなら飲めそうか本人に選んでもらいましょう。

【ステップ1】水で溶いて空腹時に飲ませる。

【ステップ2】好きな食品に混ぜて飲む。
食品の例としては、ジュース、アイス、ヨーグルト、ジャム、熱くない味噌汁やスープ、カレーなど。そして最後に水を飲むようにしてください。ただし抗生剤には酸っぱいものと混ぜると、苦くなるものがあるので、注意が必要です。

お薬服用ゼリーは6か月ころから使えます。使う際には、ゼリーに薬を混ぜるのではなく、薬を挟むようにゼリーを上下にすると、直接薬が舌に触りにくくなります。

道具にしろ、食品にしろ、子ども自身に、どれがいいか選んでもらうといいでしょう。

「飲まされる」のではなく、子ども主体で飲んでもらいましょう。そして飲めたら「褒める」ことを忘れずにお願いします。家族みんなで、思いっきり褒めましょう。

おもちゃを買ってあげるなどは、私個人としてはあまりお勧めしません。お薬を飲むことを、子どもが自分の頑張りとして、主体的に捉えられるようになるといいですね。

◆4歳~
【特徴】このくらいの年齢になると、大人の話を理解し、薬を飲む必要性もわかってくれるようになります。しかし、苦手な子は苦手です。

そのような子どもには、『おとな飲み』(元いながき薬局 稲垣美知代 考案)を提案しています。

【おとな飲み】
大人が粉薬を飲むときと同じように、口に水を含み、そこに薬を入れて、ゴクンと飲み込む方法です。これだと薬の味をほとんど感じなく飲めます。

『おとな飲み』と名付けたことで、子どもの自尊心をくすぐります。上手に飲めたらしっかり褒めてあげてください。子どもは達成感を感じます。(『おとな飲み』に関しては、また機会があれば書かせていただければと思います。)

★☆おとな飲み☆★

◆6歳~
このくらいの年齢、体重になると、錠剤という選択肢も出てきます。先の『おとな飲み』ができていると、錠剤の服用も容易と思います。

また、小さい粒状のお菓子を使って練習しておくのもいいでしょう。ただし、本人の意思を尊重し、焦らないようにしてください。

4. 上手なお医者さん、薬局のかかり方

薬の要望は遠慮なく伝えましょう。粉薬がいいのか、シロップ剤がいいのか。一日の飲ませ方は何回がいいのか。

また、いくつも薬が出ているときは「どの薬は必ず飲まなければならないか(優先順位)」も確認しておくと、飲ませるときに余裕ができますね。

お薬手帳もぜひお持ちください。お薬手帳は、飲んだ薬の記録にとどまりません。これまでにアレルギーが起きた薬や食品、熱や症状、体重、おうちに残っている薬の数、お医者さんに聞きたい事など記入しましょう。

母子手帳や診察券と一緒に「病院セット」としておくことをお勧めします。母子手帳、お薬手帳は大事に取っておいて、成人の日や結婚式の時に渡してあげると、とてもいい記念品になるのでは(^^)

子どもの服薬についてあれこれ書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。これらの中にどれか「はまる方法」が見つかるといいなと思います。

そして、小児を多く受けている薬局では、それぞれの薬剤師がいろんな「手の内」を持っていますので遠慮せず相談してください。薬を飲ませることが辛いことにならないように願っています。この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?

2021年12月8日発行

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