「病院に行く前に知っておきたいこと」の本の中で、コラムに入れたかったことがいくつもあります。
早産の体験をされた方や難病のお子さんを育てている方で「その時になって、とても困った」という経験をお持ちの方がシェアしてくださっている内容です。子どもを育てているすべての方に必要な知識、というわけではないですが、とても貴重な内容なので、経験談としてではなく可能な限り一般化して随時掲載していきたいと思っています。中でも、もしかすると、最もたくさんの方に必要な、自分の問題として、またはご家族の問題として、かかわることになるであろう、「がんについて」。多くの患者さんの相談を受けられ、またこれまでの施策にも関わってこられた片木美穂さんに「これだけは知っておきたかった」ということをまとめていただきました。ぜひご一読ください。
卵巣がん体験者の会スマイリー代表 片木美穂
1.全国どこでも質の高いがん医療が提供できるように、専門的ながん医療の提供、がん診療における地域連携協力体制の構築、がん患者・家族に対する相談支援及び情報提供等を行うがん診療連携拠点病院があること(AYA世代・小児がんの場合は小児がん拠点病院がある)。
2.それぞれの診療領域において教育を受け、十分な診療技能(専門的知識・診療経験と患者本位の診療態度)を修得、患者から信頼される標準的な専門医療を提供できる専門医がいること(婦人科のがんなら婦人科腫瘍専門医がおり公益財団法人日本婦人科腫瘍学会のホームページで検索できる)。
3.科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療を標準治療ということ。
4.多くのがんには「ガイドライン」があり定期的に更新されており、それに沿って科学的根拠に基づいた治療が行われていること。
5.日本では、効果と副作用を厳格に審査して医薬品の保険適応をしている。保険適応されている治療は承認審査を越えたエリート治療です。保険外治療は現時点で効果が明確でない・未確認のものであり、その効果に関する情報は玉石混交で、なかにはインチキに近い治療もある。個人で判断せず主治医としっかり話し合う必要があること。
6.がんの原因は喫煙、飲酒、食物・栄養、身体活動、体格、感染、化学物質、生殖要因などさまざまなことが原因としてあげられているが、すべてのリスクを避ける(絶対にがんにならない)ことは難しいこと。逆にこれをすれば絶対にがんになるというものも少ないこと。
7.インターネットの情報は玉石混交であり、調べるときは以下の情報をしっかり確認し、必要に応じ主治医と話し合うこと。
(ア) その情報が更新された日時(古い情報は塗り替えられている可能性がある)
(イ) 誰が書いているか(行政、専門医、医師、患者、家族、マスコミ、記載されていないなど、発信者により信頼度は違う)
(ウ) 根拠は明示されているか(臨床試験や論文など)
どういうジャーナルに論文が載っているかによっても信頼の質が変わる。
Am J Med/Ann Intern Med/JAMA /J ClinOncol/Blood/J NatlCancer Inst/N Engl J Med/Br J Cancer/Br J Hematol/Br Med J/Cancer/Drugs/EurJ Cancer/Lancet/Leukemia/Annals of Oncology/Biology of Blood and MarrowTransplantation/Bone Marrow Transplantation/Gynecologic Oncology/Clinical Cancer Research/Lancet Oncology/International Journal of Radiation, Oncology, Biology, and Physics/Journal of NCCN/Radiation Oncology/Annals of Surgical Oncology/Journal of Urology(米国ではこれらの信頼の質が高い医学ジャーナルに掲載されている治療は保険が適用になることが多い)
8.がんになっても治療をしながら仕事や学業を続けている人が多いこと。「迷惑をかける」としてすぐに仕事を辞めるという決断をせず、治療をしてみてから考えても遅くないこと。
9.がんという病気は罹患した時のショックが大きくなかなか他人に話しづらい病気であるけれど、ひとりで抱え込むには難しいため同じ病気になった人と繋がるコミュニティを活用することも検討して欲しい。また身近な友人で、この人は自分に辛いことや悲しいことがあっても打ち明けやすい・話しやすいなという信頼できる人を見つけておくこと。
10.がんになっても旅行や趣味を楽しむことは可能であること。悲観せずあなたらしく生きることを考えてもよいこと。