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連載「Web版★ひだまりサロン」スタートします

ひだまりクリニック院長  佐山圭子

「医療には納得が大事!」

パパママ向けの講座で小児医療講座の講師を務める際、医療を語るにあたりよく使っているのが、「納得」という言葉です。「結果や形でなく、納得が大事なんだ」と、自分の妊娠や出産など、様々な体験を通じて、そのように感じていたからです。私自身は、妊娠出産の挫折体験だけでなく、子育てそのものにもたくさんの悩みがあり、その体験が「子育て支援は、まずは母親支援から」という気持ちでの仕事につながっています。

「かわいいけれど大変!」ではなく「大変だけどかわいい!」そんな子育てになるように
産んだ後にも母親学級 予防医療中心のひだまりクリニック

その後、母を、続いて父を看取った経験からも、いろいろな場面、いろいろな立場で、医療と向き合って、やはり納得は大事だなと思っています。経過の納得ができていれば、どんな結果であれ、受け止めやすかったのです。

医療を受ける立場になると、医療はありがたいものだと実感することも多く、最近では、訪問看護や在宅医療などのシステムも変化し、とても使いやすいものに進化していると実感します。また、真摯な看護により癒される経験もしました。

その一方で、「電子化が進んだ病棟で電子カルテを見ているのだから、診察は必要ない」と言い切る医師にも出会い、残念な気持ちになることもありました。そうした経験を通じて、自分の医療を振り返ることにもつながり、つくづく「人を幸せにする医療とはどんなものだろう」と考えるようになりました。

2011年に「ひだまりサロン」という場作りから始めた開業をしてからも、小児医療は大きく変わってきています。ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン・水痘ワクチン・B型肝炎・ロタワクチンが定期接種化されました。3種混合ワクチンは不活化ポリオと一緒になり4種混合になり、来春には4種混合とヒブワクチンが一緒になった5種混合ワクチンが登場します。
よりよいワクチンへ、よりよいスケジュールへと進化しています。

私自身は地域での小児医療の中でも、予防接種と健診を主に担い、大きな病院での治療の最前線にいるわけではないのですが、以前と病気の種類が大きく変わってきていますし、入院の数が減りました。ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンにより、細菌性髄膜炎などの重症感染症が大幅に減り、ウイルス性胃腸炎の入院も減っています。予防接種の成果です。
このように、入院する子どもも減りましたし、そもそも少子化もありますから、小児病棟を維持することは総合病院でも大変なことです。けれども、小児科病床が減ってしまったら、大きな感染症の流行が起こったときに地域の小児医療がひっ迫しやすいという事態になり、それも困ります。

医療は社会に呼応するように変化します。もちろん、研究や知見の積み重ねにより、よいものになっていっています。
けれど、まだまだ子どもをとりまく問題は、いろいろあります。
虐待のこと、貧困のこと、不登校のこと、在宅医療・医療的ケア児のこと、外国籍の子どものこと、発達の支援のこと、いじめのこと、家庭内の暴力のこと、LGBTの子どものこと、、、世界に目を向ければ、さらに大きな問題も山積みです。
戦争も紛争も災害も、子どもの成育環境に大きな影響をもたらします。

医療とつきあうということは、立場の違うそれぞれの人を尊重すること。自分を大事にしつつ、他人をも大事にすることから、スタートするのだと思います。
もちろん、普通の人間関係すべてがそうなのですが、医療は、そこに命そのものがからみ、不確実性が存在するところが、難しくなってくる要因なのでしょう。

よい医療を提供するためにも、よい医療を受けるためにも、お互いがいい状態にある必要があり、働き方改革・社会の意識改革も、取り組まないといけない課題だと思います。

小児科医としての子育て支援をしたくて、予防接種・健診・母親学級・産後ケアなどに取り組んできました。健康な子どもが健康に育つこと、成育医療の分野で、これからの小児科医療にも大事な部分になっていくと思います。その子らしい育ちを保証され、豊かな人生を歩んでいくこと、同時にお母さんもそしてお父さんも応援したい、子育てを楽しく楽なものにしていってほしいと思っています。
子どもを産むことは大きなこと。それを引き受けてくれた人が「産んでよかった。子育ては辛いことがあっても楽しい」そう思ってもらえるように、そして、育てていく自分たちの力を信じられるように・・・と願っています。子育てが楽になれるような情報をこの連載でお届けしたいなと思います。

2024年2月6日配信       

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