星川小児クリニック 院長 山本淳 先生
今回は、小児喘息のお話をさせていただこうと思います。
今から20年、30年以上前を思い出すと、まだまだ重症のお子さんが多く、医師も患者さんも、いかにして重症の喘息児を減らしていくかで一生懸命だったように思います。その頃は、小児喘息は救急診療のかなりの部分を占め、秋のシーズンになると、呼吸のいかにも苦しそうな子どもが一晩中受診していました。入院する子もかなり多かったものです。小児喘息の分野でも、ようやく吸入ステロイド薬が多くの医師に肯定的に認知され、積極的に症状を予防していくという治療戦略が市民権を得はじめたのが20年ほど前のことでした。ガイドラインも画期的に改訂されました。
その後、有力な予防薬として抗ロイコトリエン薬(オノン、キプレス、シングレア)が仲間入りをし、吸入ステロイド薬は当たり前になり、ガイドラインもすっかり変わり、問題が解消したかにも思えました。
しかし、今でもかなりの患者さんから小児喘息の相談、あるいは長引く咳の相談を受けます。
その多くが、患者さんが気づいていないこともありますが、医療機関の選び方、医師とのつきあい方に起因するものなのです。
そこで、今回は、上手な医療機関の選び方や、医師とのつきあい方について少しお話ししようと思います。
以前は夜間や休日に起こる発作を恐れ、休日や夜間でも対応できる病院がベストと考えていた患者さんも多かったと思います。
しかし、きちんとしたコントロールをすれば救急外来を受診することはほとんどありません。むしろ、普段のコントロールが大切ですから、説明を十分してくれ、お子さんのことを良く知っていてくれるところであれば、小さな診療所であってもむしろその小ささ、身近さがメリットにもなります。
大きな病院の「喘息外来」というと、どうしても定期的な受診になりがちですが、小さい頃はかぜもひきやすく、不定期な受診が多いです。感染症と喘息の関係を考えると、かぜをひいたときの喘息コントロールというのは、治療がうまくいっているかどうかをみる良いチャンス。
医師に聞きたいこともいろいろあるのではないでしょうか。
また、年長児になり、症状がほぼ安定してからも、ほんの少しだけ調子が悪いので微調整をしたほうがいいかなというようなときに受診できると良いのです。
その後のコントロールのためには「ちょっとだけ悪い」ときの情報が大切なので、これはぜひチェックしておきたいところです。
そういう意味でも、規模は小さくても気軽にかかれる医療機関は、質の良い管理には結構有利なのです。
信頼できるかかりつけ医がいれば、「喘息かも?」と言われたからといって、いきなり専門医探しをする必要もありません。
「喘息」として長期的に投薬したり、管理していかなくてはいけない状況なのかどうかも、かかりつけ的にフォローしてみてわかることもしばしばです。ある感染症のために、たまたまその時期だけ喘息の症状が出ただけで、長期的にはあまり心配ない子もいるし、逆に症状は軽くても長い目で管理していきたい人もいます。そういうことが一番よくわかるのは、信頼できるかかりつけ医なのです。
でも、やはり「喘息」として、治療していくとなったら、良い結果につなげたいですよね。
ここで大切なコメントをさせてください。
それは、同じ医師がみていてもうまくいく人、いかない人がいるということです。何が違うのでしょうか?
喘息という病気は、どうやってコントロールしていくか、特に家での薬の微調整や、環境整備など、家庭にお願いしたいこと、していただければもっと良くなることがたくさんあるのですが、医師もご家族の「やる気」を感じないと、無理強いもできないなあと思って、つい「いつもの薬でつなぐ」ことしかできなくなります。患者さんのほうも、行ってもいつも同じなので、「薬の補充」以外に受診をする意味をみつけられなくなってしまい、お互いのモチベーションが低下してゆきます。
一方、「やる気」をちょっとみせてくれると、少しずつ実行可能な「プラスα」をお話しするきっかけができます。本当は「やる気」を出させてくれるのが良い医療機関なのかもしれませんが、なかなかそこまでは難しいのかもしれません。
しかし、この「やる気」の差が長い年月を経て、症状の差になります。比較的重症の喘息児であれば、成人になってからの呼吸機能の差にもつながるのは間違いないでしょう。
ぜひ、皆さんも、医療機関との関係づくりが、将来の症状の差にも影響するのだということをちょっと意識して、次の外来を受診してみませんか。
2021年10月13日配信
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