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かわいそうを見直そう

河北総合病院
小児救急看護認定看護師 並木知佳

小児科でときおり、保護者の方からの「かわいそう」という言葉を耳にします。

お鼻の吸引をして泣いているお子さんを見て「かわいそう」。
お薬を飲むのを嫌がる様子を見て「かわいそう」、「半分飲んだから、もういいですよね?」。
採血や点滴を受けている姿を見て「かわいそう」、時には「嫌がっているので、もう止めて下さい」…など。

ただでさえ病気で辛い中、吸引や注射など、苦痛を伴う治療をしなければならないことは、確かに「かわいそう」な面もあるかもしれません。お子さんが苦しんで泣く姿を見ている方も、辛いと思います。
でも、そこで「かわいそう」という言葉を掛けることについて、ちょっとだけ考えて頂きたいのです。

私が「かわいそう」ってどういうことなのだろうと改めて考えるきっかけとなったのは発展途上国でボランティア活動に参加したときのことです。
貧困層の中には、一生に一度医療を受けられるかどうかという人も多く、子どもに夢を尋ねると「15歳まで生きること」と答える子もいるような社会でした。

「日本の医療の充実と、医療を受けられることの貴重さ」を、私自身がそこで改めて感じることとなりました。

一見「かわいそう」な吸引ですが、気道を塞ぐ分泌物を吸い取り、呼吸を楽にしてくれます。
飲むことを嫌がることもあるお薬は、病気を抑え、症状を和らげてくれます。
注射は、針が刺さって痛々しいかもしれませんが、必要な薬を投与することで、重症化を防いでくれます。

確かに、病院は子どもにとって辛いことが多いかもしれません。
でも、医師も看護師も不要な処置はしませんし、医療者は誰しも苦痛を最小限にできるよう努めています。

保護者の方には、治療を受けているお子さんを応援してあげてほしいと思っています。
「かわいそう」という言葉の代わりに、例えば、お子さんが治療を頑張れるような、こんな声掛けをしてみてはいかがでしょうか?
「鼻水とってもらうと楽になるからね。」
「このお薬がばい菌をやっつけてくれるからね。」
そして辛いことを頑張った後は「チクっとして痛かったけれど、ちゃんとできてすごいね!」など、褒めながらぎゅっと抱きしめてあげると、お子さんも安心すると思います。

時には保護者の方にも、その処置や治療の目的が分からず「何かかわいそうなことをされている」、と感じられる場合もあるかもしれません。
そんな時は、「この治療はどうして必要なのですか?」「この薬は何のために使っているのですか?」など、遠慮せずに、医師や看護師に質問してみて下さい。

医療者が一方的に治療をしている雰囲気の中では、お子さんは「苦痛なことをやらされている」と感じてしまうかもしれません。その治療がなぜ必要なのかを理解して、病気を治すことを前向きに捉え、親子一緒に治療に参加することは、とても大切なことです。

保護者の方の声掛けで、お子さんにとって病院が「苦痛ばかりの、嫌な場所」ではなく、「良くなるための、大事な場所」となることも見てきました。
そのようなことを実践している親子のケースとして、慢性疾患で治療中のお子さんが、退院後、調子の悪い時に「○○びょういんにいきたい」と自分から言って、受診したこともありました。

私達看護師も、保護者の方の様々な思いに耳を傾けながら、安心して治療を受けられるようにお手伝いしたいと思っています。
また、お子さん達が、辛い中でも病院で何かひとつ成長できたと感じられるよう、頑張れる力を引き出せるような看護を心がけたいとも思っています。親子の頑張りに、一緒に伴走できたらと思います。

2022年11月10日配信

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