ひだまりクリニック院長 小児科医 佐山圭子
妊娠中は、子どもを産むことがゴールかのように考えている方も多くいて、子育てがこんなに大変とは思わなかったという正直な気持ちもよく聞きます。
初めてのことばかり、どうして泣くのかわからない、待ったなしの育児突入で睡眠不足でありながら緊張と不安も次々、ですからね。
私にも覚えがあります。小児科医で?と思われるかもしれませんが、そうなんです。
看護師さんも助産師さんも幼稚園や保育園の先生だって、学校の先生だって、です。それぞれの専門職ではあっても子育ては初めてですから。
だから、赤ちゃんは触ったことない身近にいなかったという人が心配なのは当たり前。
でも、大丈夫です。
ちゃんと、赤ちゃんが良いケアですくすく育つように、お母さんにも育てる力があって、お母さんとして、すくすく育ちます。
産後すぐの子育てを頑張っている方にぜひともお届けしたい情報があります。
それは、楽な抱っこの仕方、そして、頭の形のゆがみを予防する寝かせ方です。
先日、産後のサポートをする人向けの研修に行き、産婦人科医による身体の不調の予防の方法の仕方を聞きました。理学療法士さん二人とグループになった話がとても印象的でした。三人とも、子どもが三人でした。
腱鞘炎の話題のとき、一人目育児で二回も腱鞘炎になった私と、違和感のみでそれ以上使うと危ないと予防できて腱鞘炎を避けられた理学療法士さん二人。上手に抱っこすると予防できるんですよね。痛みがあると気持ちもやはり沈みますからね、予防できるならその方がいいです。二人目以降は私も抱っこが上手になって腱鞘炎にはなりませんでした。
その抱っこのポイントとは・・・
手首で抱かないということ。
赤ちゃんの頭は肘の内側に置いて抱きましょう。
首の傾きは前屈でなく、まっすぐか少し後屈、
赤ちゃんとなるべく密着して体重を自分の胸に預けるといいです。腕で支えると、腕にかかる重さが減ります。
赤ちゃんも身体が密着して安定していると、安心すると思います。
首が座ってないからと首のところをしっかり支え、腰を支えて二か所で抱くと、手首がとても疲れると思います。
腱鞘炎になりやすい抱き方です。
まだ小さい赤ちゃんは、肘に頭を置いて同じ側の手首で腰を支える片手の抱き方もできますが、二人目のお母さんはこういう抱き方を上手にします。
やはり経験値というか、どんどん上手になるのです。
赤ちゃんは抱っこが、とても好きですね。抱っこなら泣き止むとか、抱っこして歩けという(座って抱っこでは泣く子もいます)とか。
首が座ってないときは、縦抱きはしにくいと思いますので、上半身を斜めにしてお母さんの胸で抱っこという方法も楽だと思います。
赤ちゃんは上半身を斜めにしていると呼吸も楽ですし、げっぷも出やすいですよ。しゃっくりも、横に寝ているよりも飲んだおっぱいやミルクが横隔膜を刺激しにくいですから、止まりやすいかもしれません。(しゃっくりは止めなくても大丈夫なのですけどね)
お母さんの胸にうつぶせに斜めになるのは、タミータイムにもなります。
首は右か左かにして、呼吸の様子を見ながらだと安心です。仰向けに寝かしてるのではないので、頭のゆがみ予防でもあります。
頭の形のゆがみのことも、先ほどの理学療法士さん二人と話しました。三人目の子の頭の形が一番いいというのが共通でした。
一人目の時は、寝てる間は触らない、そーーっとしておいて寝られるだけ寝かしておこう、と好きに寝かせていてむき癖を放置していたからだと思います。そんなところまでは気が回らなかったという感じでしょうか。当時は、頭の形がどうあろうと、だんだん治るからとしか言いようがなかったですし、実際治る人が多かった。でも治らない人もいましたけれど(長男のように)そんなことは大丈夫、で長年過ぎました。
35年ほど前には、「欧米人のように」頭の形をよくしようとうつぶせ寝が勧められた時期が日本にもありました。けれど、ほどなくして、うつぶせ寝と乳児の突然死の関係があるとして、赤ちゃんは仰向けに寝かせましょうということが世界的に広く伝えられるようになりました。それまではうつぶせ寝が多かった欧米であおむけに寝かせることになり、頭の形があおむけで向き癖ができることから形を整える治療方法が開発されたのです。
日本にも10年ほど前から輸入されましたが、その前に、予防することはできます。月齢の小さいうちが効果的です。向き癖を修正するように寝かせたり、向き癖を作らないように、ある場合はその反対側に接地させるように(重力がかかるように)寝かせることが大事です。理学療法的な方法です。
先ほどのイラストのように、ソファに浅く腰かけて、抱っこする人の向けに、向き癖と反対方向にうつぶせに寝かせるのも効果的です。
頭の形のゆがみ、向き癖をつくらないようにすること、これも早く取り組むほど予防が有効です。首が全くすわってない0‐1か月の赤ちゃんではうつぶせにすると頭を右にしたり左にしたりがしにくいかもしれませんね。そういう時は、さきほどお母さんの胸でうつ伏せにして、向き癖を作らないようにしていく方法もよいでしょう。
少し大きくなって1‐2か月くらいになると、うつ伏せにすると少し頭をあげられるようになります。
しっかり見守りながらうつ伏せを無理ない範囲でしてみましょう。タミータイムといって、勧められています。
そのまま寝入ってしまってはいけません。寝かせるのは仰向きです。
ずっと向き癖対策で見張っているわけにはいきませんが、2~3か月位になると、赤ちゃんは刺激をとらえられるようになってきます。
動くお母さんを目でおったり、音の方に向いたり・・・、ですので、向き癖ができてきた方が壁になるように寝かせ、向き癖と反対の方、つまり向いてほしい方に家族がいるように、窓があるように、明るい方に、とします。
反応するようになったら、モビールやメリーを吊ったり、音のなるおもちゃやオルゴールを置いたり、という工夫もいいですね。
頭だけ向けても戻るということもありますから、そういう場合は背中に少しバスタオルなどを入れてあげて向き癖対策をしてもいいでしょう。
楽な抱っこで腱鞘炎の予防を・・・
タミータイムや向き癖対策で、頭の形のゆがみの予防を・・・
というお話でした。