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「けいれん」だ!どうしよう?・・・けいれんへの対処法

さとう小児科医院 院長 佐藤雅久
 
けいれん(ひきつけも同じ状態を表します)は、突然、意識が無くなり、目を開いて上の方など一点を見つめ白目になります。ほぼ同時に手足が硬くなり(硬直)、ピクピク、ガタガタと手足が硬直したまま震えます。呼吸が荒く不規則になり、顔面蒼白から青くなり、いわゆるチアノーゼ(※)を生じます。こんな時にどうしますか。

※チアノーゼ…顔色や全身の色が悪く、特に唇や指先が紫色になる状態

1、先ず自分が落ち着くことです。ほとんどの場合は、5分以内に止まり、後は眠ったように静かになります。

2、身につけた衣服、特にくびの周りの衣服を緩めて下さい。 衣服がくびに巻き付いて窒息する可能性があります。・・・極めて稀と考えられますが・・・

3、その時に、くびは横に向けましょう。顔を横に向けるのは、けいれん時や止まった後に、嘔吐することがあり、上を向いたままだと、吐物が喉に詰まってしまうことがあるからです。

4、叩いたり、大声で叫んだり、口に物を挟んだりしないで下さい。
昔は、舌を噛まないように、口に箸などの硬い物を入れたことがあったようですが、それは止めましょう。

私は、長い間けいれんの処置に当たってきましたが、けいれん時に舌を噛んでいた人を見たことがありません。そのような処置をすると、歯を折って、それが喉に詰まらせることがあります。

叩いたりするような無用な刺激もいけません。けいれんを長引かせたりすることがあるからです。

また、近くにいる人を呼んで、けいれんが長引いた時の手助けを頼むのは構いませんが、大声で大勢の人を集めるのは考えものです。けいれんが治まった後に、「あの子てんかんだ」などとうわさを立てられ、本人や家族が嫌な体験をする事があるからです。静かに見守るのが一番です。

5、見守っている時に、熱を測りましょう。手首の親指側で脈拍を診て下さい。脈があれば心配いりません。けいれんの持続時間を計りましょう。・・・熱、脈、時間です。

6、 5分以上しても、ぴくぴくする全身けいれんがある時、意識が回復しない時は、救急車を呼んで、医療機関を受診する必要があります。

7、脈がなく、チアノーゼが改善しないときも、一刻も早く救急車を呼んで下さい。

けいれんが治まり、意識が回復したあとに、ダイアップ座薬などのけいれん止めの薬を使う必要はありません。その後意識障害が生じたときに、薬の作用によるものなのか、脳炎などの症状なのか分からなくなるからです。

また、けいれん後に、意識がしっかりしていれば、救急外来に行く必要はありません。
一刻も早く受診する必要があるのは、激しい頭痛や嘔吐が伴っているとき、けいれんが繰り返すとき、意識障害が5分以上続く時です。髄膜炎、脳炎・脳症も考えられます。

てんかん発作であっても、熱性けいれんであっても、直ぐに処置する必要はありません。
落ち着いてから、次の日に通常の外来を受診して下さい。

この文章を読んで、けいれんについて知ることで、病院に行く必要がないと判断できれば、病院に行く必要はありません。でも、心配であれば、医療機関を直ぐに受診しても良いでしょう。子どものけいれんが、保護者に不安を与えるのは当たり前です。しかし、実際は、熱性けいれん等の、生命の危険を伴わないものが多いのです。心配し過ぎなくて良いのです。

けいれんの原因で多いのは、熱性けいれん、てんかん、急性胃腸炎にともなうけいれん、泣き寝入りひきつけ、発熱による悪寒、戦慄などです。主治医にけいれん時の状態を伝え、診断、治療をしてもらってください。

その中でも一番多いのは、熱性けいれんです。その対処法は、以前は医師により少し違っていました。しかし、小児神経学会から、「熱性けいれん診療ガイドライン2015」が出版されましたので、治療方針が統一されました。身近の小児科医に相談して下さい。

2021年10月6日発行

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