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素手抱っこのススメ

理学療法士 大石 裕子

【なぜヒトは抱っこするのか?】


なぜ赤ちゃんを抱っこするか考えたことは、ありますか?

ちょっと大きなことを言うとサルの仲間だからです。サルやチンパンジーなど、大脳の発達した動物は脳の発達が完成する前に出産するのですが、これを『生理的早産』といいます。

すぐに歩行が自立する馬や、赤ちゃんだけで巣にいられる鳥類とは異なり、抱っこやおんぶで赤ちゃんを抱えて生活するため、『授抱性動物』と発達心理学者の金子龍太郎先生は命名しています。『授抱性動物』は、とりあえず生活に抱っこが欠かせないわけなんですが、例えば、子猿をイメージしてもらうと母猿にギュッとつかまって小さくなっていると思います。人間の赤ちゃんも不十分ではありますが、例外ではありません。手のひらの接触に対して、手指をギュッと握る『把握反射』や、頭部を前方に傾けると足を曲げてしまう反射、お腹に接触があるとお尻が持ち上がって膝が曲がるといった、身体を丸めるような反射が多いのです。また、持ち上げられると、キュッと足を曲げて抱き付いています。

こうした反射や反応により、赤ちゃんは、ただ抱かれるだけでなく、抱きつくという能動的な反応をとって、抱っこを成立させているのです。

この反応を利用して抱っこをすると、グラグラとして頼りない存在の赤ちゃんも、しっかりとして抱きやすくなりますので、今回はこの反応を利用した抱っこの方法を紹介します。

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【抱っこのポイント】

抱っこのポイントは4つあります。

① 赤ちゃんのオデコにキスできる高さ
② 赤ちゃんの首は、左右どちらかに回旋し、呼吸が確保できている
③ 肘が曲がり、腕全体が挙がっている
④ 膝がお尻よりもあがり、自然な開脚姿勢をとる

ひとつずつ、詳しくご説明しましょう。

① 赤ちゃんのオデコにキスできる高さ

素手での抱っこでは、低い位置で抱っこする人は少ないと思いますが、ゲップをさせる時のように、肩越しに抱っこするようにして姿勢を整えてみて下さい。赤ちゃんの頭部が鎖骨あたりに位置し、抱っこしやすい高さになります。これを『キッシングポジション(Kissing position)』なんて言います。

②赤ちゃんの首は、左右どちらかに回旋し、呼吸が確保できている

③肘が曲がり、腕全体が挙がっている

軽く左右どちらかに頭部を45°程度、軽く回旋させると口元の呼吸をふさがないことができます。 また、腕を挙げておくと、胸を開くことができ、赤ちゃんの細い気管を保護し、呼吸がしやすくなります。さらに、肩甲骨周りが固定され、首のぐらつきが落ち着きます。

④膝がお尻よりもあがり、自然な開脚姿勢をとる

赤ちゃんを抱きあげた時の『足がヒョイッと曲がった形』のまま、骨盤・足をキャッチできるとよいでしょう。そのためのコツですが、肩越しに抱き上げ、そこから少し下げた状態で、赤ちゃんの骨盤を後ろに傾けながら、膝の裏に手を差し込んであげると、膝の上がった開脚姿勢が取れます。

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赤ちゃんが抱っこする人に身を任せてもたれかかっている状態だと、首が据わる前でも、首をぎっちりとサポートする必要がなくなります。ただし、上げ下ろしの際には、頭部のぐらつきに注意してくださいね。

また、この手足のしがみつくような反射・反応が成長とともに消え、抱っこをしても、ぴったりくっつきたがらない赤ちゃんもいます。

「抱っこすると、赤ちゃんが反り返って大変!」という方は、『抱っこする人のお腹にお子さんの足をまたがせる』、『お腹とお腹をくっつける』などの方法もあります。

スキンシップを図りながら、『シーソーゲーム』などのように楽しみながら肌を寄せ合うことに慣れていくと少しずつ距離を近づけられるようになると思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

【抱っこ紐を使う時は】

動物の話から『素手抱っこ』の話をすると、「抱っこ紐は使っちゃいけないの?」と思われるかもしれませんが、そんなことは全くありません。

大切なのは、素手抱っこでの姿勢が、お互いの抱っこ姿勢の基本になるということです。

抱っこの高さや、抱いてる位置は、素手抱っこと・抱っこ紐使用時では変わりないでしょうか?

抱っこ紐は、手や腕のサポートですので、抱っこ紐に赤ちゃんを合わせるのではなく、素手抱っこの時の赤ちゃんの位置に、抱っこ紐を合わせるように、調整をしてください。

バックルなど、調整できるところはどこなのかを確認し、抱っこする人にも、赤ちゃんにも、心地よいフィット感を探してみてください。

また、首や腰がしっかりしてくると、素手抱っこでは真正面で抱っこする機会が減ると思います。そんな時は、抱っこ紐でも、正面での対面抱きだけではなく、腰抱きやおんぶの時期になってくると思います。

赤ちゃんが、常に抱っこしている人の顔を見ているだけでなく、外への興味が広がることも知的発達のひとつです。

お使いになっている抱っこ紐の適正な使用方法、対面抱っこ以外の腰抱き・おんぶなどの推奨月齢を確認して、日常のサポートにお使いいただければと思います。

尚、抱っこ紐は、会社や発売時のバージョンにより使用方法が異なります。取り扱い説明書や、その他YouTubeなど動画でも使用方法を配信していることがあるので、参考にしてみてください。

2022年12月6日配信

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