乳児(生後すぐ〜1歳まで)
ひだまりクリニック院長・小児科医 佐山圭子
先日、赤ちゃんの睡眠についての講演を聴く機会がありました。
赤ちゃんのねんねトレーニングを強力に勧める内容でした。
ねんねトレーニング(以下、ねんトレ)とは、赤ちゃんに「夜は寝るもの。一人で寝るもの」と教えるもので、十数年ほどまえから赤ちゃん育児中の保護者の話題にしばしば出てくるようになった育児法の一つで、基本的にはまず生活リズムをつけ、夜に泣いても保護者が動かないというのが原則です。
その講演者の主張は、
「仕事に復帰する母親に夜中に何度も起きてしまう赤ちゃんの対応をしなさいという方が母親のメンタルを悪くしてしまう。子どもには母親の横が寝床であると教えてはいけない。泣かしてかわいそうなどと思う必要はない。元気に回復できた母親が昼間に思いっきりかわいがってあげればよい。」というものでした。
ねんトレの基本、生活リズムをつけることは大賛成です。
早寝早起きで十分な睡眠をとることは、とても大事なことだと思います。
赤ちゃんの睡眠にも個性があって、よく寝る子も何度も起きる子も、昼寝が短い子も長い子も。でも、寝る時間起きる時間が決まっていて、寝る時間が遅くなければよいと思います。そして赤ちゃん期の1年でも、睡眠はかなり変わります。
5~6か月頃からはじまる夜泣きも人それぞれで、夜泣きのほとんどない子から夜間何回も起きる子まで。そして、保護者の対応も、一緒に寝る(添い寝)ことで安心させて泣いたら授乳を(添い乳の人も多い)して一緒に休めているという方もいらっしゃいます。保護者と赤ちゃんがなるべく負担のない方法で夜間に休める方法を模索してほしいと思います。
発達によって(人見知りと同じ時期)夜泣きは起こってくるので、そしてさらなる発達により運動量も増えてだんだん寝ることが上手になるので、一緒に休めてそれほど辛くない人はそれのままでいいと思います。赤ちゃん期にぐっすり寝続けないとその後の発達に問題が起こるというものではないです。歩き始める頃には夜泣きの回数もぐっと減り、1歳半の健診の頃にはぐっすりというお子さんがほとんどです。
夜泣きが辛い人、ねんトレにチャレンジしたい人はチャレンジしたらいいと思います。
欧米の育児の考え方からのねんトレは、文化的な価値観・住宅事情・家族背景によって、日本の育児には合わないこともあって、チャレンジしたもののうまくいかなかったという人も多いように思います。でも、あまりにも辛いので頑張ってみた結果1週間ほどでよく寝るようになったという方ももちろんいらっしゃいます。
新しい考えの子育て方法が提唱されるようになったからといって、全ての親子に向いているというわけではないと思います。
自分で決断して頑張ってみて、うまくいったことは自信にもなるでしょう。
でも、自分には難しいことがわかったという方もいて、それは失敗というよりは、一つの経験値になると思います。
子育てのアドバイスには「壊れていないものを壊すな」という言葉があって、親子がうまくいって問題に思ってないことに関して余計なアドバイスはしないことという意味です。
子育ては、睡眠問題だけでなく悩むことは様々にあり、いろんな意見が周囲にもネット上にもある中、自分の子育てを選択していく連続です。
「子育てには正解がない」とよく言われますが、悩んだ結果、自分のやり方はこれがいいと思える選択の連続が子育てといえるのですね。
(2025年11月4日追記・配信)