子ども 心と育ちのクリニック 院長 森享子
「最近、目をぱちぱちさせたり、首や肩を傾げたりするしぐさが増えてきた。これは単なる癖なのか、何かの病気なのだろうか?」
このような状況に、悩まれた親御さんは少なくないのではないかと思います。これは、『チック』と呼ばれ、子どもでは10人に1~2人と比較的よく見られる症状です。特に3~10歳ごろから発症することが多く、男の子に多いことが知られています。
チックの症状は、様々な種類があります。まばたきや、首ふり、顔をしかめるといった運動チック。「アッ」「ンッ」など短い声を出したり、咳払いや鼻を鳴らしたいという音声チック。
症状が複雑になってくると、何度も手を伸ばして物に触ったり、物を蹴ったり、飛び上がったりしたり、言葉を繰り返したり、汚い言葉を何度も言ったりという症状が出ることがあります。
症状は、緊張した時に出やすかったり、逆にリラックスした時に増えたりと、その子によってさまざまです。
症状は、自然によくなったり悪くなったりと波があります。1年以内におさまる場合がほとんどですが、一部の人は、大人になっても続いて慢性化します。症状が強く、慢性的に続く場合には、『トゥレット症候群』という診断がつくこともあります。
思春期の後半になると、落ち着いてくることが多いのですが、別の強迫症状がでてくることもあります。
かつては、親が厳しくしつけすぎたとか、本人が神経質で気にしやすいとか、入学や転校、いじめのストレスなどといった心理的な要因が注目されてきました。
しかし、近年の研究によってドーパミンという神経伝達物質が関係した神経の病気であることが分かってきました。また、家族にチックの人がいると、症状が出やすいといった遺伝的な要因や、環境の要因など様々なことが関係していることも分かってきました。
これらのことから、チックになりやすい素質を持った子どもに、心理的要因も含めてさまざまな原因が影響した時に、症状がでると考えられています。
初めのうちは病気にみえにくいので、変な癖だと思い注意したり、わざとやっているのではないかと誤解したりということもあるようです。
必要以上に周囲が気にしたり心配することは、かえって症状を悪化させる場合があります。まずは、チックに対する正しい理解が大切です。
症状が比較的軽くて、本人も気にしていないようであれば、そのままのんびりと様子をみてよいでしょう。もし症状も目につき、本人や周囲も気にしているようであれば、環境調整や心理サポートを行います。
チックが原因で、自信を無くしたり、いじめにならないよう周囲のチックへの理解と適切な配慮が重要です。症状が重くて、日常生活や勉強に支障をきたしたり、心理的に不安定な場合は、薬物療法を考えることもあります。
またチックは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、広汎性発達障害、学習障害などに合併していることが少なくないので、生活や勉強といったそのほかの面で、難しさを感じていないかということを注意してみることも大切です。 気になる場合は、近くの小児科や、児童精神科に相談するのがよいでしょう。
Q.子どもにチックかもしれない、という症状があります。
あまり気にしない方がいいとは思うのですが、受診するとしたらどのようなタイミングでしょうか?
A.受診のタイミングは以下の5点を目安にするといいでしょう。
1.本人が気にしている場合
2.症状が重い場合
3.症状が長引く場合
4.他の症状を伴う場合
5.親御さんの不安が強い場合
チックの症状だけで、わざわざ受診するのも…と、ためらいがある場合は、風邪などで受診したついでに、相談してみるのもよいでしょう。
2022年2月16日配信
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