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お医者さんとのコミュニケーションをもっと上手にとるために

ひだまりクリニック 院長 佐山圭子

ここ10年ほど、家族が医療のお世話になることが多くあり、改めてコミュニケーションは大事だなと思っています。そして、医療者であっても、患者の立場になると質問を上手にすることは結構難しいことなんだなと改めて実感しました。忙しそうで遠慮してしまうとか、当たり前すぎてバカみたいなんじゃないかとか、気になることはありますね。

小児科にかかるときに、こころがけておいてほしいこと、コミュニケーション力アップになりそうなことを列記していきますね。

〇診察がスムーズにすすむための工夫

体温の経過のグラフを作っていって、症状や使った薬などの情報を一緒に書き込む(こどもからだメモ※末尾に記載)、おしっこの回数や下痢嘔吐の回数、解熱剤や発作時の薬を使った時刻に↓などの印をつけるなど。そうすることで、医師が問診に使う時間を減らせます。子どもをよく見て、「何がいつもと違って心配なのか」を伝えることも大事です。便の状態を写真で撮ったり、気になる咳などを動画に撮っておくのもいいでしょう。診察時は脱ぎ着のしやすい服にすることも大事です。聞きたいことは忘れないようにメモしておくのも良いでしょう。

〇診察で伝えること

どんなことに注意するか、次にどんなことが起こったら受診するか?一般的な見通しを聞いておくといいでしょう。処方をシロップにしてほしい、粉薬にしてほしい、など率直に伝えてください。

医師はいろいろな考え方の患者さん(保護者)を診ますので、特に薬が欲しいとか薬はなるべく飲みたくない、重症なのかどうかを知りたいという方もいらっしゃると思います。すべての望みが叶うわけではないですが、なるべく希望を聞いた方が処方しやすいです。飲むべき薬は、説明してそのように処方しますが、小児科で多い病気はウイルス性の感染症(いわゆる風邪や胃腸炎など)で、原因に対する薬はありません。ですので、症状に対しての薬が処方されますが、そのほとんどが飲まないといけないものではありません。(飲まないと治らないということはない)症状をやわらげ、楽に過ごせるようにするという薬です。

また、熱が続いて不安な時、専門医の意見を聞きたいときなど、大きな総合病院に紹介してほしいという気持ちも率直に伝えたらいいと思います。診察してくれている医師に失礼かもと心配することはありません。重症化したときや心配なときは連携する総合病院を紹介してくれる、普段の病気は継続的に診てくれる、そんなかかりつけ医がいると安心です。病診連携は進んできています。

〇ほかの職種も活用して!

医師に聞きにくいときは、クリニックの看護師さんや助産師さん、保健師さん、保育士さん、薬剤師さんに聞くのも手です。特に、子育ての相談はいろいろな方に聞くのもいいと思います。看護師さん助産師さんはホームケアについてよく知っています。薬剤師さんは薬の飲み方のアドバイスを上手にしてくれます。湿疹が治りにくいときに、塗り方の説明を丁寧にしてもらって、方法を変えることで治ることもあります。

〇お医者さんは怖い人?

小児科のお医者さんは、子どもたちの成長と健康を一番大事に思っています。痛いことをするのも必要だからです。

病気にならないため、健康のために必要だから医療行為をするのだということを、わかりやすく教えてあげてほしいのです。言葉が理解できるようになったら、ぜひそのように教えてあげてください。「そんなに悪い子なら病院でチックンだよ」などといわれるのを聞くととても悲しくなります。罰するための注射ではないのですから。最初は泣いていた子が、だんだん頑張れるようになる育ちのすばらしさに立ち会えるのは小児科医の醍醐味だと思っていますが、保護者の皆さんも泣かずに診察を受けられたら、頑張って注射を受けられるようになったら、育ちを喜び、ぜひ声にしてほめてあげてください。

〇医療に100%はない

いつ治りますか?いつ熱が下がりますか?大丈夫ですよね?などは答えにくい質問です。

断定的な答えは医師にはできません。

医療に「絶対」はないからです。

熱が出て最初は、症状がはっきりせず、流行もないときなどは、何の熱なのかはっきりしないことがほとんどでしょう。絶対に悪化しないとも言えません。ですが、もちろん、こうなるであろうという見通しを聞いておくのは大事で、見通しと違って悪くなる可能性はあります。見通しと違ったら受診をするタイミングであるということです。

〇経過を伝えることが医師の学びに

病気でかかったとき、よくなったら受診しないことも多いでしょう。でも医師はその後どうなったかと思っている場合も多いです。なので、その次の機会でいいですので、以前の症状がどうなったか、を教えていただければ嬉しいです。たとえ、急に悪化して救急受診後入院になったとしても、その診断名やその後の経過を知ることが学びになるからです。診察したお子さんの経過のフィードバックは既往歴になりますし、何かあったときこそ、ぜひ伝えてほしいと思います。

〇患者にできることは勉強し、経験を積むこと

身体やしくみについて、病気について、薬や治療について、学ぶことは大事です。

医師の説明を理解しやすくなります。

病気を悪いことととらえることもありません。病気はだれでもなるもので、それを克服して強くなって育っていくものなのです。

病気の記録も長年書きためると、その子の病気の特徴が見えてくることもあります。

自分の健康のためにも、子どもの健康のためにも、正しい知識と考え方ができていれば、非科学的な根拠のない主張に振り回されることも減ります。

経験を積むということは病気を実際に経験するということです。初めての病気はとても心配して不安かもしれませんが、だんだんホームケアのポイントもわかってくるものです。きょうだいでも一人一人違うし、どんな経験もその後の役にたちます。失敗だったなぁという経験も学びになります。

〇人間関係には、双方の努力が必要

「医師と患者」となると、上下関係を感じる人もいるかもしれません。けれど、人間関係はどんな関係であれ、上下関係ではないのです。

役割や立場というものは違うのですけれど、人間関係に上下があると、そこに支配被支配が起こります。医師には正しい医療知識を伝えてよい医療を実践する役割があり、患者には医師が正しく判断しよい医療をするための情報や自分の考えを伝える役割があります。

医師と患者の関係が上下関係でないということは、多くの素晴らしい医師が共通して口にする「多くの患者さんから学んできた」という言葉に表れていると思います。

そのような医師には、決して上に立っているものとしての驕りもないし、自分が常にわかっていなければいけないという縛りによるストレスもないでしょう。

よい医療は、双方の対等な協力関係の上に成り立つと思っています。患者は勉強し、自分の考えを伝えることで納得できる医療を受けることができるようになると思います。自分の考えといっても、最初はわからない・悩んでいるというところからでしょう、それでいいと思います。

自分がどうしたいかを決めるためには、学ぶことから、納得できる医療を受けるためには、コミュニケーションを大事にすることからだと思います。

2022年5月30日配信

こどもからだメモ(知ろう小児医療守ろう子ども達の会制作)

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